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iPS細胞って何?

朝日新聞より抜粋記事です。

【iPS細胞って何?】

コブク郎 iPS細胞(さいぼう)について、一から教えて。
A 正式には人工多能性幹細胞(じんこうたのうせいかんさいぼう=induced Pluripotent Stem cell)という。多能性というのは、皮膚(ひふ)や心臓、神経など、体を作っているいろいろな細胞になれるという意味。そんな力のある細胞のことを幹細胞って呼ぶんだ。
 
ホー先生 それを人の手で作った、ということなんじゃな。
A もともと、体の中にはさまざまな幹細胞がある。例えば、骨髄(こつずい)には造血(ぞうけつ)幹細胞があって、白血球や赤血球に育つことができる。間葉系(かんようけい)幹細胞と呼ばれる細胞は血管や心筋(しんきん)、脂肪(しぼう)に変わることができる。でも、そんな中で一つだけ、すべての細胞になれる究極の多能性を持った細胞があるんだ。
 
アウルさん それは?
A 受精卵(じゅせいらん)だ。お父さんの精子とお母さんの卵子が出会って、一つの細胞になった状態だ。人の体にある200種類以上、60兆個の細胞は、このたった1個がどんどん分裂をしてできたものだ。受精卵のそんな力を「万能性(ばんのうせい)」と言うよ。

ホ ホホウ。幹細胞よりも上なんじゃな。
A 受精卵がいろんな細胞に変わっていくようすは山からボールが転がり落ちていくのに例えられる。何にでもなれる受精卵は、山の頂上にあるといえる。分裂(ぶんれつ)を繰り返すうち、ある細胞は神経の仲間、ある細胞は血や筋肉の仲間などと、雨水が分水嶺(ぶんすいれい)で分かれていくように、大きなグループごとに分かれていく。細胞はさらに変化し、最終的に皮膚や筋肉といったそれぞれ特定の役割をもつ細胞になっていくんだ。

コ 変化の流れは一方向だけなの?
A 雨水が尾根を越えて別の谷に流れて行くことがないように、例えば造血幹細胞から別の仲間である肝臓の細胞はできない。そしていったん役割が決まってしまえば、その細胞がいろんな細胞に変化する力はなくなってしまう。皮膚の細胞が幹細胞に戻ったり、幹細胞が受精卵のような万能性を取り戻したりすることはない、とずっと考えられていたんだ。

ア ところが、iPS細胞は違うわけね。
A 山を下りきっていた皮膚の細胞に、いくつかの遺伝子(いでんし)を放り込んだら、まるで受精卵の中にある細胞とうり二つの細胞ができた。ただし、初めは本当に万能性がある状態、いわば山の頂上に戻ったと言い切れるのか分からなかったから、「いろんな細胞になれる」という意味で多能性と名付けたんだ。

ホ リセットボタンが見つかったんじゃな。
A iPS細胞をつくったら、それを目的の細胞に育てる。それがうまくいけば、たとえば神経の細胞をつくってけがで傷ついた神経を修復したりできるようになる。いまは移植(いしょく)が必要な心臓や肝臓といった臓器も、iPS細胞をもとにつくれるようになるかも知れない。マウスだけど、iPS細胞から精子や卵子もできている。限りなく受精卵に近い力があるのは間違いない。

ア 神の領域(りょういき)って感じ。
A 皮膚の細胞をもとに、精子や卵子をつくって新しい生命を人工的に生むことも、理論的にはできるそうだ。生命の常識が変わっていくかも知れないね。